今回もオバマ氏ネタで引っ張りますよ(笑)

皆さんがご存知の弓道は
技術はもとより、精神力の勝負であるとも言われています。

一見すると
的を射るだけの単純な武道のように思えますが
実はかなり奥が深いんです。

ある弓道の先生がこんなことを言っていました。

「弓道では的を狙ってはいけないんです。
 的以外の目に入るものすべてを視野に入れながら
 その中の一部として存在する的に当てるんです」

私は最初、どういう意味かわかりませんでした。

弓道の先生は続けます。

「何かを狙おうとすると
 視野が狭くなり、いつもと違う状況が生まれる。
 結果、手先がブレるのです。

 たとえそれがわずかなブレであったとしても
 的に当たった頃には大きなズレとなってしまいます」

確かに
私たちは大事なことを意識せずに行っています。

たとえば
「息をする」「まばたきを行う」などです。

自分が呼吸をしていることを意識すると
なぜかうまく呼吸ができなくなったりします。

つまり

どんなに大事なことであってもそれは全体の中の一部分にすぎない

という認識が非常に重要なんです。

ここで
オバマ氏を振り返ってみましょう。

彼の大統領演説では
この≪フォーカス(視点)≫をうまく使っています。

オバマ大統領は演説の際に
さまざまな視点から話を進めています。

通常は
「私」という立場から話しを進めていきますが
それだけだとなかなか相手を巻き込むことはできず
伝わりづらいのです。

これは
先ほどの弓道の話で言うところの「的に執着してしまう」状況です。

自分の視点、あるいは自分自身という的しか見えていないのです。

それに対して
オバマ大統領は複数の視点から演説をしているので
とてもダイナミックです。

あるときは大統領として

あるときはひとりのアメリカ人として

あるときはアメリカという国家の視点から

あるときは歴史の傍観者として…

例えば
困難を乗り越えるときは歴史の傍観者として話しています。

「歴史の中で繰り返しこうした男女がもがき、
 犠牲を払い、我々がよりよい生活を送れるように苦労してきた」

これが仮に
「俺が大統領として困難を乗り切ります」
と言うと、同意しない人が出てくるかもしれません。

でも
歴史を見てきた人間の目を通して事実を語れば
人は納得せざるをえません。

また
「こうしなければならない」という時には

「そしてアメリカは平和の時代をもたらす役割を
 果たさねばならない」

と、アメリカという国家が主語になります。

そうすることで
聴衆はみなアメリカ人なので心が一つになります。

連帯感が生まれるのです。

これらを組み合わせることで
人々の感動を生むような話ができるのです。

一つの的にこだわってはいけません。

全体を見ながらその中に存在する
さまざまな視点を利用するのです!

「さまざまな視点から話をしてみよう
 そうすれば、相手を巻き込む話し方ができる」

これぞ、溝口流「フォーカス活用演説術」です。

日本人は西洋人に比べてスピーチが苦手だと言われています。

今後はグローバルスタンダードな世の中になるので
人の心を動かすような話し方を身につけていきたいですよね。